2011年4月14日木曜日

大聖堂の映る風景

ここは、まるで本当に生きているかのような世界。
見るもの、動くもの全てが、現実味を帯びている。
もう、あなたはこの世界に降り立ったのだろうか。


馬車から降りると、そこには、大聖堂がそびえ立つ。
大聖堂へ続く階段は、左右から回り込み、
入り口へと導いているようだ。

古いレンガ造りの階段は、
古いながらも丁寧に磨かれて、
時間とともに風化された雰囲気を持っている。

微かに漂うバラの香り。
そして、静かに流れ落ちる水の音。
ここに存在する全てのものは、
静かに呼吸をし、息づいている。

花々や木々、風や土、水、すべてのものが、
自然にここに生まれ、
それぞれが邪魔することなく共存しているかのようだ。

「早く上に来てご覧なさい」

そんな声が大聖堂の奥から聴こえる気がする。

階段を上ろうとしたとき、
ふと振り返ると、もう馬車は姿を消していた。

「いつの間にいなくなったのだろう。」

中庭には、石像が大聖堂を見守るようにたたずみ、
両手にほのかな光の玉を作っているようにみえた。
時々、その光の玉は、強く輝くように見える。
この暗闇の中、この大聖堂へ招くように、
光が中庭にこぼれ落ちる。

石像の周りには、その光を反射するように
美しい水がはられ、
どこからともなく、舞い込んだ花びらが浮かんでいる。

そのときだった。

石像の放つ光が、大聖堂の入り口を照らすかのように、
光り輝いた。

「誰かいるのだろうか。」

ゆっくりと大聖堂への階段を上り、
入り口まで辿り着くと、
頑丈そうな扉が閉まっていた。

しかし、石像の光は、その奥まで照らし続けている。

「この奥には、一体・・・」

重そうな扉に手をかけ、ゆっくりと押してみた。

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