ここは、まるで本当に生きているかのような世界。
見るもの、動くもの全てが、現実味を帯びている。
もう、あなたはこの世界に降り立ったのだろうか。
馬車から降りると、そこには、大聖堂がそびえ立つ。
大聖堂へ続く階段は、左右から回り込み、
入り口へと導いているようだ。
古いレンガ造りの階段は、
古いながらも丁寧に磨かれて、
時間とともに風化された雰囲気を持っている。
微かに漂うバラの香り。
そして、静かに流れ落ちる水の音。
ここに存在する全てのものは、
静かに呼吸をし、息づいている。
花々や木々、風や土、水、すべてのものが、
自然にここに生まれ、
それぞれが邪魔することなく共存しているかのようだ。
「早く上に来てご覧なさい」
そんな声が大聖堂の奥から聴こえる気がする。
階段を上ろうとしたとき、
ふと振り返ると、もう馬車は姿を消していた。
「いつの間にいなくなったのだろう。」
中庭には、石像が大聖堂を見守るようにたたずみ、
両手にほのかな光の玉を作っているようにみえた。
時々、その光の玉は、強く輝くように見える。
この暗闇の中、この大聖堂へ招くように、
光が中庭にこぼれ落ちる。
石像の周りには、その光を反射するように
美しい水がはられ、
どこからともなく、舞い込んだ花びらが浮かんでいる。
そのときだった。
石像の放つ光が、大聖堂の入り口を照らすかのように、
光り輝いた。
「誰かいるのだろうか。」
ゆっくりと大聖堂への階段を上り、
入り口まで辿り着くと、
頑丈そうな扉が閉まっていた。
しかし、石像の光は、その奥まで照らし続けている。
「この奥には、一体・・・」
重そうな扉に手をかけ、ゆっくりと押してみた。
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