ここは、まるで本当に生きているかのような世界。
見るもの、動くもの全てが、現実味を帯びている。
もう、あなたはこの世界に降り立ったのだろうか。
当てもなく、辿り着いた先。
もう時間は午前0時を回っていた。
辺りは、薄暗くなって、微かな光が揺れて見える。
ゆっくり見渡してみると、どうやら小高い丘の上にいるようだ。
周囲は、海らしい。
静かな海だ。今日は風もなく、波もない。
普通ならさざ波の音が聞こえてもいいはずなのに、
ここは、シーンと静まり返っている。
目の前には、馬が2頭おとなしく、馬車を止めて待っている。
そう、待っているのだ。
誰が乗るのか、辺りには人っ子すらいない。
しかし、馬車馬は、静かに、時に2頭身を寄せ合いながら、
ここに来る客人を待っている。
馬車の向かう道は、橋がかけられ、
その遥か向こうには、宮殿らしき建物がかすかに見える。
橋のところどころには、ほんのりと蝋燭の明かりが揺れて、
この闇夜を映し出している。
あまり寒くもないが、木々にはまだ雪景色が残り、
時折、粉雪が舞う。
「この先には、一体何があるんだろう」
馬車に乗り込むと、それを察したかのように
馬たちが足音もたてずに歩き出した。
橋の上をゆっくりと進みながら、周りを見てみる。
「今日は星が綺麗に見える」
なぜだろう。ここは空気がとても澄んでいるように感じた。
決して温かなものではなく、しかし、冷たくもない。
夜空には、大きな月がじーっと馬車を見ているようだった。
月明かりと蝋燭の灯火がゆらゆらと揺れ、
馬車は、大きな像のある噴水まで辿り着く。
どうやら、もうそろそろ馬車は終点のようだ。
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