2011年4月11日月曜日

馬車のある景色

ここは、まるで本当に生きているかのような世界。
見るもの、動くもの全てが、現実味を帯びている。
もう、あなたはこの世界に降り立ったのだろうか。

当てもなく、辿り着いた先。
もう時間は午前0時を回っていた。
辺りは、薄暗くなって、微かな光が揺れて見える。

ゆっくり見渡してみると、どうやら小高い丘の上にいるようだ。

周囲は、海らしい。
静かな海だ。今日は風もなく、波もない。
普通ならさざ波の音が聞こえてもいいはずなのに、
ここは、シーンと静まり返っている。

目の前には、馬が2頭おとなしく、馬車を止めて待っている。
そう、待っているのだ。
誰が乗るのか、辺りには人っ子すらいない。
しかし、馬車馬は、静かに、時に2頭身を寄せ合いながら、
ここに来る客人を待っている。

馬車の向かう道は、橋がかけられ、
その遥か向こうには、宮殿らしき建物がかすかに見える。

橋のところどころには、ほんのりと蝋燭の明かりが揺れて、
この闇夜を映し出している。

あまり寒くもないが、木々にはまだ雪景色が残り、
時折、粉雪が舞う。

「この先には、一体何があるんだろう」

馬車に乗り込むと、それを察したかのように
馬たちが足音もたてずに歩き出した。

橋の上をゆっくりと進みながら、周りを見てみる。

「今日は星が綺麗に見える」

なぜだろう。ここは空気がとても澄んでいるように感じた。
決して温かなものではなく、しかし、冷たくもない。

夜空には、大きな月がじーっと馬車を見ているようだった。
月明かりと蝋燭の灯火がゆらゆらと揺れ、
馬車は、大きな像のある噴水まで辿り着く。

どうやら、もうそろそろ馬車は終点のようだ。

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