ここは、まるで本当に生きているかのような世界。
見るもの、動くもの全てが、現実味を帯びている。
ふと気がつくと、たくさんのバラに囲まれていた。
この大聖堂が、今までよりも広く大きく見える。
少しだけ足に力を入れて、次の花に移ろうとすると、
体が自然に宙に浮く。
背から広がるように出ている美しい羽。
「こっちよ。早く。」
バラ達の向こうから、一緒に踊っていた彼女の声がした。
羽をはばたかせ、ゆっくりとその声の方向へ飛んでみた。
そこには、白と赤で囲まれたバラの中心に、
いつもと変わりない仲間達が揃って笑顔を見せていた。
カウンターにいた女性は、黒いドレスを見にまとったかのような
美しい羽をヒラヒラさせ、彼女と一緒に待っていた。
彼女と一緒に白と赤のバラの上で、
身を寄せ合うように立ってみる。
黒い羽の女性は、ゆっくりとその手にもった分厚い本を開き、
「2人は、ここで永遠の愛を誓うのです」
と読み上げていった。
その声に呼応するかのように、
大聖堂では、仲睦まじい2人の男女が、
同じように祭壇の前に立ち、誓いをかわしていた。
ああ、そうだった。
この場所をひらひら舞いながら飛んでいたんだ。
いつも一緒に飛んでいた。
ちょうど、いつもより強い風が吹いて、
行き先がわからなくなったんだ。
ここで見た景色は、全てが本物であり、
その瞬間に起こっていた事実の出来事だった。
時々、巻き起こる風の行方に身を任せて、
ようやく、ここに戻って来たんだ。
そう、ここはあらゆる動物達が、
その幸せを祝う場所。
きっと、バラの影では、
同じように蝶たちも幸せを祝っているかもしれない。
Fin
Celebrate Story
Camel Mint